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飲食店の口座を使い分けて資金管理をラクにする方法|4つの口座で丼勘定を卒業

「もうかっているはずなのに、お金が残らない」の正体

ランチもディナーもほぼ満席、スタッフもフル稼働で回している。常連さんから「いつも繁盛してるね」と声をかけてもらえる。それなのに、月末に通帳を見ると思ったほどお金が残っていない――そんな経験はありませんか。

原因の多くは、売上も経費もプライベートの支出も、すべて1つの口座で管理していることにあります。いわゆる「丼勘定」の状態です。レジの現金から食材の仕入れ代を払い、オーナーの生活費も同じ口座から引き落とす。これでは本当の利益がいくらなのか、通帳を見ただけではわかりません。

飲食店は現金・クレジットカード・QRコード決済と入金のタイミングがバラバラなうえ、食材の仕入れは現金払いや掛け払いが混在します。お金の出入りが複雑だからこそ、口座の整理が効いてきます。

この問題を解決するシンプルな方法が「口座の使い分け」です。

飲食店オーナーが持ちたい4つの口座

口座を目的別に分けると、お金の流れが見えるようになります。おすすめは以下の4つです。

口座役割入出金の例
1. 売上・経費用日々の営業資金売上の入金、食材仕入れ・家賃・光熱費・人件費の支払い
2. 納税用税金のプール消費税・所得税・住民税の積み立てと納付
3. 将来投資用お店の成長資金厨房設備の入れ替え、内装リニューアル、2号店の準備
4. オーナー生活費用個人の生活費個人事業主の生活費引き出し、法人役員の報酬受取

ポイントは、1と2は「今の経営」に関わるお金、3と4は「将来」に関わるお金、という分け方です。できれば1・2と3・4で別の金融機関にすると、うっかり手をつけてしまうリスクが減ります。

飲食店ならではの口座管理ポイント

飲食店の売上・経費用口座で気をつけたいのは、入金と出金のタイミングのズレです。

売上の入金タイミングはバラバラです。現金売上はその日のうちに手元に入りますが、クレジットカード決済は翌月や翌々月の入金、QRコード決済は翌日〜数日後の入金になることが多く、実際にお金が口座に届くまでにタイムラグがあります。一方で食材の仕入れは毎日発生し、月末締めの掛け払いなら翌月に一括で請求が来ます。

このズレを把握せずにいると、「売上は立っているのに口座残高が足りない」という事態になりがちです。対策として、各決済サービスの入金サイクルを一覧にしておくと安心です。

決済手段入金タイミングの目安
現金当日
クレジットカード月1〜2回(締め日から15〜30日後)
QRコード決済翌日〜翌週
電子マネー月1〜2回

食材の仕入れ先が複数ある場合、振込先ごとに支払日を整理しておくと、月末にまとめて慌てることがなくなります。仕入れ代金の支払いは売上・経費用口座から行い、現金で仕入れた分もこの口座から出金した現金で払うルールにすると、帳簿がすっきりします。

口座を分けるとこんなメリットがある

口座を分ける一番のメリットは、売上用口座の残高がそのまま営業利益に近い数字を示してくれることです。毎月の入金合計が売上高、出金合計が経費。その差額がプラスなら黒字、マイナスなら赤字と一目でわかります。

飲食店はFL比率(Food=食材原価 + Labor=人件費)が売上の60%前後に収まっているかどうかが経営の健全性を測る指標です。口座を分けて入出金を整理しておくと、この比率を毎月追いかけやすくなります。

ほかにも、こうした利点があります。

  • 確定申告が早く終わる — 事業の入出金だけが記録されるので、会計ソフトへの取り込みがスムーズ
  • 税務調査で困らない — 調査時にはプライベートの支出を見せなくて済む
  • 融資審査に通りやすい — 資金の流れが整理されていると、金融機関の評価が上がる
  • 納税で慌てない — 納税用口座にプールしておけば、確定申告の時期に資金不足にならない

納税用口座にいくら積み立てるか

飲食店経営で見落としがちなのが、消費税の準備です。とくに消費税は、赤字の年でもお客さまから預かった分を納める必要があります。

飲食店は店内飲食が標準税率10%、テイクアウトが軽減税率8%と税率が混在するケースがあります。ここでは店内飲食中心のお店を想定し、消費税率10%でざっくりした積み立て目安を示します。

月の税抜売上預かる消費税(10%)仕入れ等で払う消費税差引プール額の目安
200万円20万円約8万円約12万円
400万円40万円約16万円約24万円
800万円80万円約32万円約48万円

※簡易課税制度を選択している場合、飲食業は第四種事業でみなし仕入率60%が適用されます。売上の消費税額の40%(=100%−60%)がプール目安です。2割特例を使えるケース(2026年分まで適用可能)では、売上の消費税額の2割が納税額です。

毎月の売上が確定したタイミングで、売上・経費用口座から納税用口座へ振り替える習慣をつけましょう。年に1回まとめてではなく、毎月こつこつ移すのがコツです。

個人事業と法人で少し違うところ

個人事業主の場合、お店のお金=自分のお金なので、生活費用口座への移動は「事業主貸」として記帳するだけで済みます。

一方、法人の場合は注意が必要です。将来投資用口座やオーナーの生活費用口座のお金も、あくまで法人の資産です。オーナー個人に移すには役員報酬として毎月定額で支払う「定期同額給与」のルールを守る必要があります。期の途中で金額を変えると、その変更分が経費として認められないケースがあるので、金額の変更は事業年度の開始から3カ月以内に行いましょう。

参考:当事務所の口座運用例

実際に私自身がどう口座を使い分けているか、参考までにお伝えします。

事業用口座(日常の業務) はメガバンクをメインに、サブとしてPayPay銀行を使っています。PayPay銀行を選んだのは、もともとペイジー(Pay-easy)で社会保険料を納付できたのが理由です。今はネット銀行でもペイジーに対応するところが増えており、PayPay銀行のほか、楽天銀行住信SBIネット銀行GMOあおぞらネット銀行などが利用できます。

納税用口座 は、正直なところ私の場合はなくても回っています。利益の規模によっては別口座にする必要はなく、売上・経費用口座の残高で十分まかなえるケースもあります。

将来投資用口座 は、意図的に作ったというよりも、ネット銀行のスマホアプリで預金の引き出しや振替が手軽にできるので、結果的にそういう役割になりました。使い勝手の良さでなんとなく貯まっていく、というのが実情です。

役員報酬の受取口座 は、法人をお持ちの場合は必須です。法人口座(メガバンクやネット銀行)とは別に、個人名義の口座を1つ用意してください。法人と個人のお金を同じ口座で管理するのは絶対に避けましょう。

ちなみに私の法人はメガバンクの法人口座を持っておらず、PayPay銀行の法人口座だけで運用しています。法人のネット銀行はPayPay銀行のほか、あおぞら銀行も使い勝手がいいので、どちらでも問題ありません。

もうひとつ、好みが分かれるかもしれませんが大事だと思っていることがあります。事業をしばらく続けていると、毎月の運転資金はだいたい読めるようになります。残高がマイナスにならないよう気をつけつつ、事業用口座には最低限の残高だけ残して、余裕資金は将来投資用口座に移し、株式で運用するようにしています。

事業家であれフリーランスであれ、自分の時間やお金をどう投資して運用するかは、お金がないうちから考えておくべきです。労働収入だけの事業、あるいは自分の事業だけでは限界があります。株式市場に自分のお金のポジションを持っておくと、世の中の企業の動きや経済の流れに敏感になれます。この感覚は、設備投資や店舗の取得といった事業上の判断にも必ず役立ちます。

少額でもいいからとにかく始めて、とにかく続ける。ずっとやらないのが一番よくありません。時間を味方につけて複利で増やすという発想を、創業当初から持って20年続ける。これが私の実感として、極めて重要だと考えています。

当事務所のサポート

「口座は分けた方がいいとわかっていても、今さらどう整理すればいいかわからない」という声をよくいただきます。当事務所では、飲食店の経営に合わせた口座設計のアドバイスから、会計ソフトとの連携設定、毎月の資金繰りチェックまでサポートしています。

まずはお気軽にお問い合わせください。現在の通帳をお持ちいただければ、その場で改善ポイントをお伝えします。

飲食店の税務、一人で悩んでいませんか?

この記事を書いた人

小松 啓

小松 啓

公認会計士・税理士

大分県出身。監査法人・コンサルティング会社を経て独立。食べることが好きで、出張先でも地元の飲食店を巡るのが楽しみです。飲食店の経営は毎日が勝負。仕込みや営業に集中していただけるよう、帳簿まわりの面倒ごとは当事務所が引き受けます。

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