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飲食店を開業するなら個人事業と法人どちらが有利?税金・社会保険・設立費用で比較

開業前に決めておきたい「経営形態」

飲食店を開業するとき、「個人事業で始めるか、法人(株式会社)を設立するか」は早めに決めておきたいテーマです。「法人にした方がいい」という話を聞くこともありますが、開業と同時に法人を設立して得するケースは限られています。

多くの飲食店オーナーにとっては、まず個人事業でスタートし、利益が安定してから法人化を検討する方が資金負担は軽くなります。この記事では、個人事業と法人を「税金」「社会保険」「設立費用」「融資」の4つの軸で比較します。

個人事業と法人の違いを一覧で比較

まずは全体像をつかむために、主な違いを表にまとめます。

比較項目個人事業法人(株式会社)
設立手続き税務署に開業届を出すだけ定款作成・認証・登記が必要
設立費用0円20万〜30万円(登録免許税+手数料)
税金の種類所得税・住民税・事業税法人税・法人住民税・法人事業税
所得税率 / 法人税率5%〜45%(累進課税)年800万円以下の部分は15%、超える部分は23.2%
赤字の繰越3年間10年間
社会保険加入義務なし(飲食業は非強制適用業種)代表者1人でも強制加入
融資の受けやすさ創業融資は個人でも法人でも差なし代表者保証なしの融資制度あり
税務調査の頻度比較的少ない個人事業より多い傾向

こうして並べると、法人には赤字繰越が10年間できるメリットがある一方で、設立費用や社会保険の負担が大きいことが分かります。

税金面の比較 — 開業初期は個人事業が有利になりやすい

個人事業の所得税は累進課税で、課税所得195万円以下なら税率5%、195万円超〜330万円以下なら10%です。一方、法人税は年800万円以下の所得に対して15%(中小法人の軽減税率、2027年3月末開始事業年度まで適用)がかかります。

開業してすぐの時期は、店舗の内装工事や厨房設備の導入で初期費用が大きく、手元に残る利益は小さくなりがちです。飲食店の開業費用は1,000万〜2,000万円に達することも珍しくありません。課税所得が300万〜400万円の水準なら、個人事業の方が税率は低くなります。

法人の方が税金面で有利になるのは、課税所得が500万円を超えてきたあたりからです。所得税率が20%(330万円超)、23%(695万円超)と上がっていくにつれ、法人税率15%との差が広がります。法人では代表者への役員報酬を経費にできるため、利益の分散ができるのもポイントです。

ただし、開業1〜2年目でそこまで利益が出る飲食店は多くありません。まずは個人事業で始めて、利益が500万円を安定的に超える段階で法人化を検討する流れが現実的です。

社会保険の違い — 飲食業は個人事業なら加入義務なし

飲食店の開業で最も見落とされがちなのが社会保険の負担です。

法人を設立すると、代表者が1人だけでも社会保険(健康保険・厚生年金)への加入が義務になります。スタッフを雇えば、スタッフ分の保険料の半額も法人が負担します。月給25万円のスタッフ1人あたり、法人の負担額は月3万5千〜4万5千円ほどです。

一方、個人事業の飲食店は「非強制適用業種」に分類されており、スタッフが5人以上いても社会保険の加入義務がありません。事業主もスタッフも国民健康保険と国民年金に各自で加入する形になるので、事業主がスタッフの保険料を負担する必要がありません。

開業直後の売上が読みにくい時期に、毎月の社会保険料が固定費として乗ってくるのは資金繰りに響きます。飲食店は食材原価や人件費の比率が高い業態ですから、固定費の増加は利益を圧迫します。社会保険の加入は求人面でプラスになりますが、経営が安定してきたタイミングで法人化し、社会保険を整備するという順番がおすすめです。

融資・信用の面では大きな差はない

「法人の方が融資を受けやすい」という話を聞くことがありますが、創業融資に限って言えば、個人事業でも法人でも審査の基準はほぼ同じです。日本政策金融公庫の創業融資では、事業計画の内容・自己資金の額・過去の経験が重視されます。法人を作ったから融資額が増えるということはありません。

飲食店の取引先は一般のお客さまと食材卸・酒類卸が中心なので、「法人でないと取引できない」というケースもまずありません。信用面でも、飲食店では個人事業と法人で大きな差はありません。

法人の場合、一部の創業融資制度で代表者保証を付けない借入が可能ですが、それを理由に法人化するのは本末転倒です。事業を成功させるために何をするかに集中した方が、結果として経営はうまくいきます。

当事務所のサポート

「個人事業と法人、自分の場合はどちらが得なのか」は、開業費用の規模・スタッフの人数・想定売上によって答えが変わります。当事務所では、開業前の段階から税金と社会保険料のシミュレーションを行い、どちらの形態が資金繰りに有利かを具体的な数字でお伝えしています。開業届の提出や届出書類の準備もサポートしていますので、「まだ物件も決まっていない」という早い段階からお気軽にご相談ください。

飲食店の税務、一人で悩んでいませんか?

この記事を書いた人

小松 啓

小松 啓

公認会計士・税理士

大分県出身。監査法人・コンサルティング会社を経て独立。食べることが好きで、出張先でも地元の飲食店を巡るのが楽しみです。飲食店の経営は毎日が勝負。仕込みや営業に集中していただけるよう、帳簿まわりの面倒ごとは当事務所が引き受けます。

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