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飲食店スタッフの源泉所得税 — 毎月の計算方法と納付スケジュールまとめ

そもそも源泉所得税とは

スタッフに給与を支払うとき、額面がそのまま手取りになるわけではありません。給与からは社会保険料や源泉所得税、住民税が天引きされます。このうち源泉所得税は、オーナーが「スタッフ本人に代わって」国に納める税金です。

大事なポイントは、源泉徴収は法律で定められた義務だということ。「事務が大変だからスタッフに自分で申告してもらおう」は通用しません。試用期間中のスタッフやアルバイトであっても、給与を支払う限り源泉徴収が必要です。飲食店はアルバイトやパートの比率が高い業種ですが、短時間勤務であっても例外ではありません。

毎月の源泉所得税の計算手順

源泉所得税の金額は、国税庁が公表する「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」で求めます。手順は次のとおりです。

  1. 給与の総支給額を出す — 基本給、調理手当、深夜手当、残業手当などを合計する
  2. 非課税の交通費を引く — 月15万円以下の通勤手当は非課税
  3. 社会保険料を引く — 健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料の本人負担分を差し引く
  4. 税額表を確認する — 上記の金額と扶養親族の数をもとに、該当する欄の税額を読み取る

計算例(2026年・令和8年の税額表)

たとえば基本給22万円、調理手当2万円、深夜手当3.5万円、残業手当2.8万円、交通費8,500円の正社員スタッフ(扶養親族なし)の場合を見てみましょう。

項目金額
総支給額311,500円
非課税交通費-8,500円
健康保険料(本人負担)-15,180円
厚生年金保険料(本人負担)-27,450円
雇用保険料(本人負担)-909円
課税対象額259,461円

課税対象額259,461円を税額表の「259,000以上262,000未満・扶養親族0人」に当てはめると、源泉所得税は月額6,600円前後になります(令和8年分の税額表で確認してください)。

なお、2026年(令和8年)1月から新しい税額表が適用されています。基礎控除が48万円から58万円に引き上げられた影響で、従来の表をそのまま使うと税額がずれるため、必ず最新の税額表に切り替えてください。

アルバイト・日雇いスタッフの場合

飲食店ではアルバイトやパートのスタッフが多く、給与の支払い方もさまざまです。月給制の正社員には上記の月額表を使いますが、日払い・週払いのスタッフには「日額表」を使う場面もあります。

  • 月給・週給で支払う場合 — 月額表の「甲欄」(扶養控除等申告書を提出済み)または「乙欄」(未提出)で計算
  • 日雇い・日払いの場合 — 日額表の「丙欄」を使う(日額9,300円未満なら源泉徴収は0円)
  • 2か月を超えて継続雇用する場合 — 丙欄は使えなくなり、甲欄または乙欄に移行

居酒屋やカフェでは「週末だけ入るスタッフ」「繁忙期だけのヘルプ」など雇用形態が多様になりがちです。扶養控除等申告書を提出してもらっているかどうかで適用する欄が変わるため、入店時の書類管理が大切です。

納付期限と「納期の特例」制度

源泉徴収した所得税は、原則として給与を支払った月の翌月10日までに税務署へ納付します。ただし、飲食店のように常時10人未満のスタッフで運営しているお店は「納期の特例」を使えます。

項目原則納期の特例
対象全事業者給与支給人員が常時10人未満
納付回数毎月(年12回)年2回
1〜6月分の納期限各翌月10日7月10日
7〜12月分の納期限各翌月10日翌年1月20日
届出不要「納期の特例の承認に関する申請書」を税務署に提出

年2回の納付にまとめられるのは事務負担の面で助かりますが、半年分を一括で納めるため、まとまった金額になります。たとえばスタッフ5人で毎月の源泉所得税が合計3万円なら、半年で18万円です。飲食店は仕入れや家賃など月々の固定費が大きい業種なので、「納付月になって資金が足りない」とならないよう、毎月分を別口座にプールしておくのがおすすめです。

なお、アルバイトを含めた給与支給人員が常時10人以上になると、この特例は使えません。繁忙期にスタッフを増やす飲食店は、人数のカウント方法を事前に確認しておきましょう。

納付が遅れたときのペナルティ

源泉所得税の納付が1日でも遅れると、次のペナルティが発生します。

  • 不納付加算税 — 納付額の10%(税務署の通知前に自主的に納めた場合は5%)
  • 延滞税 — 納期限の翌日から年2.4%程度(2か月超は年8.7%程度、令和7年の特例基準割合で計算)

ただし、納期限から1か月以内に自主納付し、過去1年間に納付遅れがなければ不納付加算税は免除されます。うっかり忘れに気づいたら、できるだけ早く納めることが大切です。

当事務所のサポート

源泉所得税の計算は毎月のことなので、正確さと手間のバランスが求められます。当事務所では、飲食店の給与体系に合わせた源泉徴収の設定、アルバイトの日額表適用の判断、クラウド会計との連携、納期の特例の届出まで対応しています。「アルバイトが多くて計算が煩雑」「給与計算が合っているか不安」という方は、お気軽にご相談ください。

飲食店の税務、一人で悩んでいませんか?

この記事を書いた人

小松 啓

小松 啓

公認会計士・税理士

大分県出身。監査法人・コンサルティング会社を経て独立。食べることが好きで、出張先でも地元の飲食店を巡るのが楽しみです。飲食店の経営は毎日が勝負。仕込みや営業に集中していただけるよう、帳簿まわりの面倒ごとは当事務所が引き受けます。

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