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飲食店開業の物件選びと内装工事でありがちな落とし穴 — 税理士の視点で解説

物件選びの前に決めておくこと

飲食店の物件を探し始めると、駅からの距離や賃料に目が行きがちです。でも、物件探しの前にやっておくべきことがあります。自分がやりたいお店の規模感と業態を固めることです。

席数、厨房の広さ、客席とキッチンの比率——この3つが決まると、必要な坪数が見えてきます。カウンター中心の小規模店なら10〜15坪、テーブル席20〜30席で20〜30坪が目安です。ここを決めずに物件を見て回ると、「なんとなく良さそう」で契約してしまい、あとから内装で苦労するケースが少なくありません。

また、飲食店では業態によって必要な設備がまったく異なります。焼肉やラーメンのような「重飲食」はダクト工事や排煙設備に大きな費用がかかり、カフェやバーのような「軽飲食」は比較的抑えられます。物件によっては重飲食不可の条件がついていることもあるため、業態を先に確定させておくことが重要です。

物件を見つけてから事業計画を考えるのではなく、事業計画ができてから物件を探す。この順番が大事です。

居抜きとスケルトン、どちらを選ぶか

物件のタイプは大きく「居抜き」と「スケルトン」に分かれます。それぞれの特徴を整理します。

項目居抜き物件スケルトン物件
内装工事の坪単価(目安)20万〜50万円50万〜100万円
20坪の場合の内装費用400万〜1,000万円1,000万〜2,000万円
工事期間2〜4週間1ヶ月半〜2ヶ月半
レイアウトの自由度低い高い
前テナントの影響受けやすいなし

居抜き物件は初期費用を抑えられるのが一番のメリットです。前の飲食店が残した厨房設備(業務用冷蔵庫・コンロ・シンクなど)をそのまま引き継げれば、数百万円単位のコストダウンになります。ただし、厨房のレイアウトを変えるとなると、ダクト工事やガス配管の引き直しだけで100万〜200万円かかることもあります。

居抜きで特に注意したいのは、引き継ぐ厨房設備の年式と動作確認です。業務用冷蔵庫やフライヤーは使用年数が長いと故障リスクが高く、開業直後に買い替えが必要になるケースもあります。前テナントの閉店理由も含めて、設備の状態は契約前に必ずチェックしてください。

スケルトン物件は費用がかさむ分、自分の理想どおりの動線を作れます。10年以上使う場所なので、長い目で見るとスケルトンの方が良かったというオーナーも多いです。

どちらが正解ということはなく、手元の資金とこだわりのバランスで決めるのが現実的です。

見落としがちなインフラ設備のチェック項目

物件の見学で外観や広さばかり気にして設備を見ていなかった——これはよくある話です。飲食店では、水道・電気・ガス・換気の設備状況が内装費用に直結します。

水道(給排水)・グリストラップ — 飲食店では大量の水を使うため、引込水道管の口径は最低でも20mm、できれば25mm以上が目安です(物件や自治体の基準により異なります)。口径を太くする工事だけで30万〜60万円かかるので、契約前に確認してください。加えて、飲食店には**グリストラップ(油脂分離装置)**の設置が義務づけられています。既設がない物件では新設に20万〜50万円かかり、排水管の勾配確保も必要になります。

電気 — 業務用の厨房機器は消費電力が大きく、IH調理器は1台あたり5kW前後、食洗機は3〜5kWを消費します。これにエアコン・照明・冷蔵庫を加えると、小規模店でも単相100Aは必要です。大型の厨房機器を使う場合は**動力契約(三相200V)**が別途必要になることもあり、引込工事に30万〜50万円かかる場合があります。電気容量が足りないと営業中にブレーカーが落ちるという最悪の事態になります。

ガス — 飲食店の厨房は家庭用とはまったく別物です。業務用ガスコンロの火力は家庭用の3〜5倍にもなり、ガス管の口径や供給量が十分か確認が必要です。都市ガスかプロパンガスかで月々のランニングコストも変わります。プロパンガスは都市ガスの1.5〜2倍の料金になることもあるので、物件の段階で確認しておきましょう。

換気・排煙設備 — 飲食店で見落としやすいのがダクト(排気設備)工事です。重飲食(焼肉・ラーメンなど)では煙や臭いの排出が大きな課題になり、ダクトの新設に100万〜300万円、脱臭装置の追加でさらに50万〜100万円かかることもあります。近隣トラブルの原因にもなるため、保健所の基準だけでなく、建物のオーナーや近隣店舗との調整も必要です。軽飲食でもダクト工事は発生するので、既存ダクトの状態と容量は必ず確認してください。

内装工事の見積書でチェックすべきポイント

内装業者の見積書に「工事一式 ○○万円」とだけ書かれていたら要注意です。内訳がわからないまま契約すると、追加費用のトラブルにつながります。

確認したい項目は次の5つです。

  1. 設備工事と内装工事が分かれているか — 電気・給排水・ガス・ダクトの設備工事と、壁・床・天井の仕上げ工事は別物です
  2. 厨房設備の費用が含まれているか — 内装費と思い込んでいたら別見積もりだった、というケースは多いです。業務用冷蔵庫は1台30万〜100万円、業務用食洗機は50万〜150万円するため、漏れると大きな誤算になります
  3. 保健所の営業許可基準を満たしているか — 2層シンクの設置、床材の耐水性(コンクリートまたはタイル仕上げ)、手洗い設備の独立設置、食品庫の確保など、保健所の検査に通らないと営業許可が下りません(基準は自治体条例で異なるため、管轄の保健所に事前確認が必要です)
  4. 原状回復の条件 — 退去時に元に戻す費用がどこまで発生するか、契約書と照らし合わせて確認します
  5. 追加費用の発生条件 — 工事中に想定外の事態(排水管の劣化、ダクト経路の変更など)が見つかった場合の費用負担がどうなるか、事前に取り決めておくと安心です

2〜3社から相見積もりを取って比較すると、相場感がつかめます。

当事務所のサポート

物件と内装は開業費用の中で最も大きなウエイトを占めます。飲食店の開業費用は1,000万〜2,000万円になることも珍しくなく、ここで予算がふくらむと、運転資金が足りなくなり資金繰りが苦しくなるパターンに陥りがちです。

当事務所では、物件の契約前に内装見積もりと事業計画書の整合性をチェックしています。「この見積もりで融資は通るか」「運転資金はいくら残すべきか」といった判断は、税理士へ早めに相談することで精度が上がります。お気軽にご連絡ください。

飲食店の税務、一人で悩んでいませんか?

この記事を書いた人

小松 啓

小松 啓

公認会計士・税理士

大分県出身。監査法人・コンサルティング会社を経て独立。食べることが好きで、出張先でも地元の飲食店を巡るのが楽しみです。飲食店の経営は毎日が勝負。仕込みや営業に集中していただけるよう、帳簿まわりの面倒ごとは当事務所が引き受けます。

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